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4/25 書評




東直己
「残光」
★★★★★






三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」
★★★★★









石田衣良
「アキハバラ@DEEP」
★★★★★


 病院通いの2回に1回は電車利用だから、多忙な割には読めた。先週は厚めの文庫本を3冊、しかも、そのすべてが5つ★に恵まれた。
 東直己の「残光」は2001年に日本推理作家協会賞を受賞した作品。北海道の山奥で人目を避けて暮らしている榊原健三は、今でこそ孤独な芸術家として地元では知られているが、実は、凄腕の始末屋として札幌のヤクザたちに恐れられた過去を持っている。
 ある日、札幌で起こった殺人事件のテレビ報道に、かつての恋人の姿を発見した健三は、その女性の息子を救うために山を降りる決心をする。北海道警と暴力団を相手に、単身で立ち向かう健三に勝機はあるのか、手に汗握る活劇の幕が切って落とされる(なんか、月並みな表現だな)。闘う健三の姿に俳優の高倉健をイメージしていたボクであったが、あとがきまで読んだら、書いた井家上隆幸も同じことを書いていた。ちょっと、どころか、かなりカッコいい主人公なのである。男たるもの、こうじゃなきゃいかんと思わせる描写が散りばめられた小説だ。
 「まほろ駅前多田便利軒」は4年前の直木賞受賞作品。東京都南西部に位置する(架空の)都市「まほろ市」で便利屋を営む多田啓介のもとに、高校時代の同級生、今は宿無しの行天が転がり込む。独身の啓介だが、変わり者の行天を居候させておく謂れはない。高校時代のある出来事のこともあるし、早く出て行ってもらいたいのだが、いつしか啓介にとって、行天の存在はかけがえのないものになっていく。便利屋に持ち込まれる雑多な仕事も、行天と一緒だとなんか変。いちいち事件になってしまうのだ。
 社会の片隅に生きる貧乏コンビの生き様と、事件の奇妙さ、徐々に明らかになっていく2人の過去、全部で6篇の連作がひとつに繋がり、甘辛いラストになだれ込む。読ませる小説である。
 石田衣良は「池袋ウェストゲートパーク」シリーズを全部読み通したし、そのほかにも主だった作品を5、6冊は読んだから、そろそろ卒業してもいいかなと思っていた。でも、いちおう世間の話題になったし、TVドラマや映画にもなったし、いろんな解説なんかを読んでも褒めちぎられていたりするから、この本も読んでおいたほうが後悔しなくて済むだろうという気持ちで手に取った本である。
 世間の評判通りだった。面白かった。しかも、新鮮だった。ただし、お勧めしにくい。
 というのも、アキバのオタクたちが主人公だし、その主人公たちは、みんながみんな病気持ちだし、そのみんなが力を合わせて画期的な検索エンジンを開発し、それを横取りした財閥と闘い、復讐を遂げるというストーリーなので、出てくる用語がパソコンオタク過ぎるからなのだ。まあ、年老いてもメルマガを読もうというオタク老人たちにはなんでもないことかも知れないが、機械音痴、電気恐怖症、パソコン幼稚症のボクには、ところどころ意味不明なところがあった。もっとも、それでもめっちゃ面白かったのだから、細かいところには目をつぶれってことなのかも知れない。しかしまあ、石田衣良、恐るべしであるな。

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by osampo002 | 2010-05-06 01:50 | 本を読もう!
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