荻原浩 「「メリーゴーランド」」 ★★★★☆ 別冊宝島編集部 「笑う競馬」 ★★★★☆ 本を読むどころの騒ぎじゃない1週間だったから、たった2冊である。 荻原浩の作品は、これまでに「なかよし小鳩組」、「神様からひと言」、「あの日にドライブ」(直木三十五賞候補)、「コールドゲーム」(山本周五郎賞候補)の4冊を紹介したことがある。軽い文章ながら、ストーリーの意外性や、人間の本質をじっくりと見据えた人物設定、きっちりとハッピーエンドまで読者を引っ張っていく展開力などに、なかなかの冴えを見せる作家だと思う。 この「メリーゴーランド」も面白い小説だった。取り立てて「感動的」なわけではないが、ラストまで引っ張っていく語り口は健在だし、文章自体が軽快なので手軽な気持ちで読める。 主人公遠野啓一は某地方都市の市役所職員である。民間企業を辞めて中途採用された口だが、すでに7年間の地方公務員生活に馴染みきってしまっている。その啓一に新しい辞令が出た。次の職場は、膨大な累積赤字を抱えるテーマパーク「アテネ村」の再建対策室である。市長以下、役人根性に浸りきった上役たちに取り囲まれた状態で、妻子にまで「小心者」と呼ばれる啓一がどのような奇手を編み出すのか、ちょっとわくわくするような設定だ。 「笑う競馬」を読むのは2度目になる。2年ばかり前に一度読んで、とても面白かったので、読んだ本はよほど感動的だったもの意外はすべて古本屋に直行という原則を崩して、馬キチガイのはんべぇくんに差し上げようと思って取っておいたのである。でも、先天性アルツ系のボクは、その後20回以上はあったはんべぇくんとの出会いのチャンスに、ことごとくその本を持っていくのを忘れたのだった。 こないだ、たまった100冊ほどを古本屋に取りに来てもらうときに、本の山の中からこの本が出てきたので、次の機会には絶対忘れないようにというので、いつも持ち歩くバッグの中に早々と入れた。そのついでに、もう一度読み直してみたわけである。 競馬にはまったく関心がないボクであるが、ディック・フランシスの大ファンであることからも分かるように、書かれたものの面白さは分かる。競馬の仕組みについても、ある程度の知識はあるので、書かれている内容の「笑える」ポイントも逃していないつもりだ。というか、全編これ笑いの本であるから、この本を読んで笑えないようでは困る。人間性を疑ってみたほうがいい。 プレミア版の直接配信申し込みを受け付けます。 詳細はこちらをご覧ください。
by osampo002
| 2010-04-20 00:52
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