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今週の書評


乙川優三郎
「霧の橋」
★★★★★



大沢在昌
「炎蛹」
★★★★★



大沢在昌
「氷舞」
★★★★★





大沢在昌
「灰夜」
★★★★★



大沢在昌
「狼花」
★★★★★



熊谷達也
「懐郷」
★★★★☆


 大沢在昌の「新宿鮫シリーズ」をとうとう最新作の『狼花(シリーズIX)』まで読み終えた。1990年の『新宿鮫(シリーズI)』が日本推理作家協会賞長篇、吉川英治文学新人賞をダブル受賞、1993年の『無間人形(シリーズIV)』が直木賞を受賞したことは以前書いたが、9冊目まで続くシリーズものが惰性に陥ることなく、むしろ、常に前作を凌駕する水準を維持し続けていることは驚嘆に値する。おそらく、この9冊目で完結ではなく、まだまだ先がありそうな気配だが、大沢の筆をもってすれば、今後もよりスリリングな展開が期待できようし、次はどういうプロットで挑んでくるのか、そのどきどき感もより高まろうというものだ。鮫島警部を始めとする常連の登場人物たちの行く末にも、きっと驚きの展開が待っているだろうと予感させる。

乙川優三郎『霧の橋』は97年の時代小説大賞を受賞した秀作である。武士の身分を捨てて紅屋の主人となった惣兵衛が、大店の陰謀や、父親の仇の出現といった事件を契機に武士の魂を呼び起こされていくが、最愛の妻は夫が武士に戻ってしまうのではないかとの不安に苛まれる。惣兵衛がどうやって苦境を克服し、夫婦の危機を乗り越えるのか、美しい文体と表現力で、感動のクライマックスまで一気に読ませてしまう小説である。

熊谷達也はマタギ3部作と呼ばれるシリーズの第2作『邂逅の森』と、直木賞受賞の第3作『氷結の森』を先月読んで、その筆力の確かさ、プロット組み立ての巧さに感心したことから、現代ものではいかがかと思って読んでみたのである。戦後の混乱のあとがまだ残る昭和30年代を舞台に、ひたむきに生きた女を主人公にした7編の短編を集めたもの。それぞれに余韻のある、切ない話だが、爽やかな読後感を得ることができた。

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by osampo002 | 2010-04-06 10:31 | 本を読もう!
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