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2009/05/17 SUN (No.2235)


雨上がりの児童公園







 発刊当初からの古参読者であるシゲコさんからご質問。こないだこの欄で紹介した冗談音楽に関してだが、視覚的な可笑しさや言葉の可笑しさなら、その道のシロートにも分かりやすいだろうけど、音楽的なユーモアってのは、たとえば、クラシック音楽などにまったく関心のない人にも、可笑しさが理解できるのであろーか、との疑問である。
 もっともな疑問だと思う。たとえば、名曲をパロディ化したといっても、元歌の名曲を聴いたことがなければ、どこがどうパロディ化されているのか分かるまい。普通はそう思う。
 あの有名なモーツァルトの「音楽の冗談」、一説によれば、シロートのくせに、いっぱしの作曲家ぶって楽曲を発表する貴族たちを皮肉るために作曲したと言われている。つまり、当時ならば、ある程度の音楽ファンなら、全編これ冗談と聴けたのである。大いに笑いを取ったことであろう。
 しかし、現代では、(シロートにもはっきりと分かる冗談部分もあるにはあるけれど)大半は、和声や音楽形式、楽器の特色などを知っている人にしか、その可笑しさは分からない。モーツァルトの時代には明らかな「作曲法のミス」とされていたことも、現代では普通に多用されていてミスとはされないものも多いので、冗談音楽とは聞こえないのである。
 でも、ご心配なく。モーツァルトのこれは特殊な例。こないだ紹介した「ホフヌング音楽祭」はDVD、つまり映像と音楽だから、疑いなく笑える。クレージーキャッツやドリフがやっていたドタバタ音楽を、もっとうんと上品に、ウィットを利かせてやっていると思えばいい。でも、これは、映像が出るから笑えると言いたいわけじゃない。映像なしでも可笑しい。原曲を知らなくても問題なし。新曲だって入ってしね。
 映像なしでもちゃんと笑えるというのを、別の例でご説明しよう。山本直純って知ってる?トラさん映画の主題歌を作曲した人と言って分からなければ、「オーケストラがやってきた」で、飛びあがって指揮していたヒゲの音楽家と言えば分かるだろう。典型的な「ヘンなオヤジ」と見えたが、実は彼、音楽家としてはかなりの大家であらせられた。相当に尊敬されていた「ヘンなオヤジ」だったのである。
 その山本直純だが、冗談は顔だけではなく、冗談音楽の分野でも大家であった。その冗談音楽の集大成とも言うべきCDがある。CDだから映像はない。でも、とてつもなく下らなくて、とてつもなく音楽的で、なおかつ、とてつもなく可笑しい。クラシック音痴を音楽好きにするというのが、彼の人生の目標であったとあの岩城弘之が語っているが、なるほど納得である。運転中の眠気覚ましにも最適のCDである。



【収録曲】
[DISK1]
1.交響曲第45番「宿命」(ベートーヴェン/山本直純変曲)
2.ピーターと狼(プロコフィエフ)
3.ピアノ狂騒曲「ヘンペラー」(ベートーヴェン/山本直純変曲)
4.ヴァイオリン狂騒曲「迷混」(メンデルスゾーン/山本直純変曲)
[DISK2]
1.ピアノ狂騒曲「ヘンペラー」(ベートーヴェン/山本直純変曲)
2.ヴァイオリン狂騒曲「迷混」(山本直純変曲)

山本直純指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
古今亭志ん朝(ナレーション)
伊達純(ピアノ)
ルイ・グレーラー(ヴァイオリン)


今日のプレミア版

おっちゃんの赤い車



展示作品:
通常版「おっちゃんの赤い車」
エッセイ:沈下橋探検
今日のポイント:機械化農業
ネット撮影会講評:はんべぇさんの作品
「電脳都市の夜明け」

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by osampo002 | 2009-05-18 02:20 | 音楽を聴こう!
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