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7/4 今週の書評





津本陽
「名臣伝」
★★★★☆





コーマック・マッカーシー
「血と暴力の国」
★★★★☆





薬丸岳
「天使のナイフ」
★★★★★





石田衣良
「5年3組リョウタ組」
★★★★★



 紫綬褒章まで貰っちゃった作家のことを、うだうだと書いてもしょうがないので一点だけの指摘に留めるが、著者本人が剣道3段、抜刀道5段というだけあって、剣戟の場面を描かせると津本陽にかなう人はいない。1年ばかり前に読んだ「薩南示現流」で脱帽して以来、この著者の小説を読むときは、どうしても剣戟の場面に注目するようになった。
 今回読んだ「名臣伝」は、徳川家康の十男、八代吉宗の祖父であり、御三家である紀州徳川家の始祖となった徳川頼宣に仕えた14人の家臣の物語である。まだ戦国の気概が武士の心中に色濃く残る時代を背景に、様々な武士の生き方が描かれる。それぞれは短編だが、共通するのは、仕える主に対する忠義心だ。ときに独断、粗暴な人柄であった頼宣も、これらの忠臣には礼をもって対した。この君主にして魂魄の勇士ありの感を抱く。著者特有の、簡潔な記述の積み重ねによる濃密な表現が心地よい一冊であった。
 前々回に解説した「ザ・ロード」に衝撃を受け、この「地と暴力の国」を一冊と、映画化された「ノーカントリー」のDVD(こっちのほうはまだ観ていない)を購入した。現代アメリカを代表する純文学作家マッカーシーの世界をもっと知りたくなったのだ。
 「ザ・ロード」は世界破滅後の架空のシチュエーションを舞台に、人としての正しい生き方を問うた小説だったが、この「地と暴力の国」は人間と暴力との関係を、とことん突き詰めていった末のひとつの提示である。描写はハードボイルド小説だが、扱うテーマは哲学だ。
 偶然にも麻薬密輸団の抗争直後に現場を通りかかったモスは、数多くの死体と大量の麻薬、大金を発見するが、金だけを失敬して逃走する。それを追うのが殺人狂のシュガー。登場する人物が次から次に無残な殺され方をする。シュガーが「暴力」の「象徴」なら、逃げるモスも暴力なしには生き延びられない。
 対照的に、この事件を追うベルという名の保安官は、いわば「非暴力」の象徴として描かれる。最終的には、その「暴力の象徴」と「非暴力の象徴」しか生き残らないから、小説の普通の結末を期待していると臍を噛むことになる。逃げるモスに勝利はないのだ。
 しかし、純文学をハードボイルドタッチで読まされるとは思ってもいなかった。後味に未消化感が残るのは、著者が提示する「哲学」が十分理解できないからだ。学術書じゃないんだから繰り返して読む気にもならないが、それにしても、何か得体のしれないものにドワーッと襲われたような重圧を感じる。大衆文学とは異なる威圧感を受けた。楽しむだけじゃなくて、オマエもたまには思索しろよ、と痛いところを突かれた感じ。
 「天使のナイフ」は2005年の江戸川乱歩賞を受賞した著者のデビュー作である。審査員の意見の違いから例年紛糾し、2作品が同時受賞などということも多い同賞で、予備選の段階からダントツの支持を集め、審査員の満場一致で受賞が決定したという作品だ。
 フランチャイズのコーヒー店を経営する桧山貴志は、5年前に愛妻を3人の少年たちに殺された経験を持つ。今は、多忙な仕事の傍ら、残された愛児との2人暮らしにも慣れ、事件のことは極力忘れようと努力している。しかし、犯行当時13歳であった少年たちが、少年法の厚い壁に守られ、罪を問われることがなかった点に対するわだかまりは心の中に残っている。
 ある日、コーヒー店の近くで殺人事件が起こる。殺された沢村和也は、貴志の妻を殺害した少年の一人だった。確たるアリバイがない貴志は警察に疑われることになるが、決定的証拠もないため拘束されるには至らない。
 貴志の心の中に、更生への道を歩んでいたはずの少年たちの、その後の人生への疑問が芽生える。自らへの容疑をただす意味もあって、殺された沢村や他の2人の過去・現在を探り始めた貴志であったが、そこには驚くべき事実が隠されていた。
 旧少年法が抱えていた矛盾が、重い下地となって全編を貫く。その下地の上に、思いもかけぬ真相があぶりだされてくる。読み応え十分の一冊である。
 先週は4冊の本を読んだが、どれも推薦する価値十分の内容であった。しかし、その中から一冊だけを選べと言われたら、躊躇なく「5年3組リョウタ組」を推す。西日本新聞、北海道新聞、神戸新聞、中日新聞に2006年から連載された石田衣良初の新聞小説である。
 中道良太は東北の地方都市で名門公立小学校に勤務する教師である。考えることは苦手だが、とことん前向き、涙もろくて純情で、でも根っから「いまどき」の男子でもある。茶髪やネックレスはいまいち評判が悪いけれど、本人はまったく気にする様子もない。その良太と、初めて担任を務めることになった5年3組の32人の子供たちの1年間を描いた物語だ。いじめやDV、パワハラ、少年犯罪といった事件を通して、子どもと同じ目線で悩み苦しみ、あがきながら、良太も子供たちも成長していく。
 その成長の過程が実に感動的だ。何度も泣きそうになりながら読んだ。実は、読みながら、ずっとやすちんの姿とリョウタとを重ね合わせていた。やすちんも小学校の教師である。GREEに掲載される彼の日記を欠かさず読んでいるけれど、教師という職業に自負と誇りを持つ姿にはいつも感心していた。小説の中で、「教師というのは、子供たちから学ぶことに生きがいがある」みたいなセリフを読み、なるほど、やすちんも学んでいるんだなと、妙に納得してしまったのだった。
 漱石の名作「坊ちゃん」の、誰も書きえなかった正統的後継作、という評価があるようである。でも、ボクにはそうは読めなかった。石田衣良の勝ち!彼ならではの、「坊ちゃん」を超えた名作だと思う。

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by osampo002 | 2010-07-08 02:28 | 本を読もう!

7/4 Sun. 新潟県十日町市


紫陽花咲く棚田





 




今日のプレミア版


牧場の囲い



展示作品:「牧場の囲い」
エッセイ:Ireland-36
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:休載
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by osampo002 | 2010-07-08 02:20

7/3 Sat. 新潟県十日町市


山上の棚田





 




今日のプレミア版


古い農家



展示作品:「古い農家」
エッセイ:Ireland-35
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:休載
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by osampo002 | 2010-07-08 02:19

7/2 Fri. 埼玉県三郷市


ジャンプ





 




今日のプレミア版


一足先に大豊作



展示作品:「一足先に大豊作」
エッセイ:猫じゃらしは美味しいぞ!
今日のポイント:若干の工夫の跡
ネット撮影会講評:ひでっちさんの作品「日本の里百選・遊子水荷浦-第1回 -」
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by osampo002 | 2010-07-08 02:17

7/1 Thu. 東京都台東区


夜の交差点





 




今日のプレミア版


興味津々



展示作品:「興味津々」
エッセイ:下町が肌に馴染む
今日のポイント:モノクロ感覚を育てる方法
ネット撮影会講評:休載
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by osampo002 | 2010-07-08 02:15

6/30 Wed. 埼玉県岩槻市


赤い車





 




今日のプレミア版


横断歩道



展示作品:「横断歩道」
エッセイ:鬼嫁がパソコンを始めた
今日のポイント:これから飲みにいくぞという雰囲気
ネット撮影会講評:遥夢さんの作品「父と子のひととき」
BUBUさんの作品「行き交う人々」
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by osampo002 | 2010-07-08 02:13

6/29 Tue. 東京都台東区


立ち話は交通の邪魔





 




今日のプレミア版


サンドイッチマン



展示作品:「サンドイッチマン」
エッセイ:当分は草刈り専業だ
今日のポイント:対比する脇役
ネット撮影会講評:コスモスさんの作品「語らい」
k_tsubakiさんの作品「白雲の島」
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by osampo002 | 2010-07-08 02:12

6/28 Mon. 新潟県十日町市


雲出ずる処





 毎週一回のこっち(週刊版)のほうのこのコラムだが、週一でいいわけだから日刊当時よりはるかに楽になると考えていたのに、どうも、現実はそうじゃないみたいで、けっこうな苦労を強いられている。
 日々の出来事や、その出来事から派生したいろんな感慨は、プレミア版で日記風に綴っているから、その繰り返しでは能がない。読者の大半はダブっているに違いないからだ。週刊ならではのテーマを見つけて書こうと思うのだが、それがなかなか思い浮かばない。ある程度文章を書き慣れた人なら分かると思うけど、書くという作業は、書くべきテーマがありさえすれば、簡単とは言わないにしても、七転八倒して苦しむというほどの大事業ではない。書き出せば、知らぬうちに書き終わることもあるぐらい、筆が進む性質のものなのだ。
 でも、そのテーマが貧脳には重荷になる。作家や漫画家といった本職の方々でさえ、ときには心身症を患ったりするように、「書く」ことより、「何を書くか」を考えるほうがきついのだ。毎回毎回お田んぼの話じゃ、いくらなんでも芸がない。でも、ノーミソの大半は、この時期、お田んぼと親の介護のことしか考えていないから、それとは別の話題はないか?と探しても、貧脳の中にはビールと焼き鳥ぐらいしか残っていない現実なのだ。
 しかも、である。先々週みたいに、本が一冊しか読めなかったという週なら別だが、先週みたいに4冊も読んだ日にゃ、書評を書くだけで精力の大半を使い果たしてしまう。書評欄なんてつまらん!止めてしまえばいい、というご意見もなくはないのだが、それだけが楽しみというご意見のほうが数的には凌駕しているので、始めた当初は「埋め草」の気分だったものが、止めるに止められなくなってしまっている。書くしかないわけだ。
 でも、そっちは考えなくてもテーマが決まっている。注意すべきは、できるだけ「勘違い」をなくすことだけだ。いくら嘘八百で生涯を貫いてきたボクでも、詐欺師じゃない以上、意図的に嘘はつきたくない。書くことに勘違いがないかだけを注意すれば、ノーミソへの負担はあまりない。時間はかかるけど・・・。
 ということは、順番からしてどうしても後回し、最後になるこのコラムに取りかかる頃には、すでにもう、夜も明けようとしているということになる。焼酎のお湯割りもすでに4杯目、5杯目を飲み終えた。ノーミソは麻痺寸前、ただでさえ思いつないテーマが浮かんでくる道理がない。
 ははは、言い訳だけで、ここまでに1,100字書いた。時々依頼が来る頼まれ駄文書き(匿名代筆業)なら、ここまでで税別24,750円だ。テーマが思いつかないときは、「テーマが思いつかない」ことをテーマにすればいいわけだな、勉強になった。一銭にもならんし、二度と使えんけど・・・・。




今日のプレミア版


宵闇迫る



潤いの雨



草取り



松口の棚田



展示作品:「宵闇迫る」「潤いの雨」「草取り」「松口の棚田」
エッセイ:田んぼは順調
今日のポイント:写真の説明
ネット撮影会講評:きょんちさんの作品「日の出の印象」「サッパ船、岩くぐりに挑む!」
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by osampo002 | 2010-07-08 02:09