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2009/07/30 THU (No.2308)


踏切の人々







 百田尚樹の「永遠の0(ゼロ)」を読んで大泣きしてしまった。61年になんなんとするこれまでの生涯で、本を読み、あるいは映画を観て泣いたことは数あるけれど、これほど泣かせられたのは初めてだ。
 なんと表現すればいいのか分からない。それほど動揺している。
 読書家で知られる俳優の児玉清があとがきに書いているが、「心を洗われるような感動的な出来事や素晴らしい人間と出逢いたいと、常に心の底から望んでいても、現実の世界、日常の世界ではめったに出逢えるものではない。しかし、確実に出逢える場所がこの世にある。その場所とは、本の世界・・・」では、とても言い足りないとボクは思う。
 フィクションの世界であるから、人物設定などは自由自在、どんな善人も、どんな悪人も創造し放題、ではあるのだろうけれど、その想像上の人物に読者を出合わせ、感情移入させ、涙まで流させることが、簡単であろうはずがない。つまり、それほど真に迫った人物を作り上げない限り、読者は一歩引いた視線でしか、その人物を見てくれないのだ。
 今年26歳になる健太郎は、司法試験に失敗を繰り返し、あてのない自堕落な生活を送っている。そんな健太郎に、フリーライターである姉がアルバイトを持ちかける。自分たちの本当の祖父のことを調べるから、手伝って欲しいというのだ。
 彼らの祖父が実の祖父ではないことを知ったのは、6年前に祖母が死んだときであった。だが、祖母や母親、自分たち姉弟を心から愛し、育んでくれた育ての祖父ならいざ知らず、母親でさえまったく記憶がないという実の祖父に親近感など持っていない。写真すら残っていない。他人と同じである。しかし、年老いた母親が、この頃つとに、実の祖父のことを知りたがっている様子なのだ。健太郎は、気の進まぬまま実の祖父のことを調べ始める。
 実の祖父、宮部久蔵は終戦直前に、特攻により戦死を遂げている。果たして、当時の久蔵のことを見知っている人に会えるのか、そもそも、まだ生きている人がいるのか、話はそこから始まる。
 小説でも映画でも、泣かせ所というのはたいてい一番最後だ。その泣かせ所まで話を盛り上げ、引っ張っていくのが作家の力量、普通はそうだ。でも、この小説は、最初から最後まで泣かせてくれちゃうのである。とてもじゃないが、人前で読んではならない。
 ボクは、あと一週間ほどで61歳になる。もう十二分に手遅れではあろうけれど、残りの人生、できることなら、宮部久蔵のような人間になれるよう努力しようと思ったことであった。すべての日本人に読んでもらいたい小説だ。






今日のプレミア版


駅前




展示作品:
通常版「駅前」
エッセイ:遊んでる場合じゃないのに
今日のポイント:参考写真
ネット撮影会講評:Takaさんの作品
「一人寂しく」
「雨、ぴょん!」
お魔女の作品
「降って来た」

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by osampo002 | 2009-07-31 02:18 | 本を読もう!

2009/07/29 WED (No.2307)


黒い壁







 業平橋でスカイツリーの工事現場を見、浅草のうんこビルでこういう写真を撮った後、いつもの六区飲み屋街を3軒梯子して、その間に生を10杯ぐらい飲み、2冊半の本を読んだ。読みかけの本はいずれ紹介するとして、読了の2冊は、福井晴敏「トゥエルブY.O.」と三崎亜記「となり町戦争」。
 「トゥエルブY.O.」は著者得意のシュミリーション小説である。はっきり言って、いまいちであった。話が荒唐無稽なのは、シュミレーションものだからしょうがないにしても、記述が退屈で読みづらい。読み終えたのは、ボクが忍耐強かったとしか言えないな。江戸川乱歩賞受賞作だが、あの「亡国のイージス」ほどの迫力は感じられなかった。
 一方、「となり町戦争」は秀作。2004年に小説すばる新人賞を獲得したデビュー作である。同時に三島由紀夫賞と直木賞の候補にもなっている。ある日突然、となり町との間で戦争が勃発したという、なんとも荒唐無稽な設定なのだが、その荒唐無稽な面白さもさることながら、戦争というものの本質を抉り、鋭く突く洞察と筆致には感動すら覚えた。
 平凡なサラリーマンである主人公は、役場の総務課となり町戦争係から召集を受け、「戦時特別偵察業務従事者」の辞令を交付される。いったいなんのための戦争なのか、となり町との間になんの確執があるのか、それすら分からぬままに、戦争当事者になってしまうのである。
 戦争小説なのに、戦闘場面は描かれない。市民生活も通常と変わらない。なのに、町の公報には、町勢概況の欄に、町の人口、転出、転入、出生などとともに、死亡67人(うち戦死者53人)と併記されている。しかも、その数字が月ごとに増えていくのである。となり町の役場には、屋上から「隣接町との戦争による健全な町づくりを!」の垂れ幕が掲げられている。
 文章のタッチは軽い。設定のバカバカしさにそぐう書き方だ。だが、その文章で綴られる洞察は、直木賞に推されるだけの深みがある。充実の読後感を得られる本だ。







今日のプレミア版


スカイツリー




展示作品:
通常版「スカイツリー」
エッセイ:わくわくする
今日のポイント:飛ばさぬこと
ネット撮影会講評:Ukiukiさんの作品
「仲良し」
k_tsubakiさんの作品
「返し馬」

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by osampo002 | 2009-07-30 03:51 | 本を読もう!

2009/07/28 TUE (No.2306)


夏祭りを前に







 市内を散策していると、こういう景色に出会うことが多くなった。今週の週末あたりに盆踊りや夏祭りを計画している自治会が多いのであろう。
 しかし、天気予報はドツボである。西日本に大きな被害をもたらした豪雨が、どうも、こっちの方にまで勢力を伸ばしつつあるみたいで、ボクらの子ども会キャンプも雨の中での開催になりそう。もっとも、どの道ボクは、民宿で酒食らって寝ているつもりだから、雨だろうが雪だろうが関係ない。
 ところで、話はガラッと変わるが、YouTubeで面白い動画を見つけた。忙しいくせに、こういうサイトで道草を食うのが好きときているから、ときに、こういう掘り出し物にぶつかるのである。タイトルは「ネコの二重唱」、ロッシーニの美しいメロディがボーイソプラノで歌われる。本来はソプラノとメゾソプラノの二重唱なのだが、少年の澄んだ歌声で聴く方がはるかに素敵だ。一人で笑っていてもつまんないから、ちょっとお借りしてきた。みなさんで笑ってくれ給え。なお、動画を見るにはJava Scriptを有効化する必要があるので念のため。



動画はこちらから。

あるいは、こちらでも。


今日のプレミア版


車両通行止め




展示作品:
通常版「車両通行止め」
エッセイ:駅前再開発
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:せろこさんの作品
「水の底の棲家」

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by osampo002 | 2009-07-29 01:52 | 音楽を聴こう!

2009/07/27 MON (No.2305)


明日天気にな~れ







 相馬野馬追い撮影会に参加した2日間を含め、今日までの5日間に3冊の本を読んだ。今月も残り少なくなってきたが、月間トータルでは、これまでにまだ13冊しか読んでいない。ペースがいつもより遅いのは、たぶん、撮影会やら飲み会やら、そういう拘束時間が多いのとの関連であろう。あるいは、ビールが殊のほか美味しい季節になったこととも関係している可能性がある。
 3冊は、機本伸司の「神様のパズル」、隆慶一郎の「見知らぬ海へ」、津本陽の「開国」である。
 「神様のパズル」は物理学の話。小松左京賞受賞のSF小説だが、最先端物理学、例のカミオカンデなんてぇのの理屈が分かっている、あるいは、分からずとも興味があるという人にしかお勧めできない。とは言え、機械音痴、電気無知、物理白痴のボクが読めたということは、まあ、分からなくても面白かったということではあるのだが、忍耐力は人それぞれだからね。宇宙は無からできた→無ならそこいら中にある→だったら、宇宙が作れないはずがない、そういう話である。飛び級で大学4年生なった16歳の天才少女と、そのお守役を仰せつかったボンクラ大学生が、宇宙作りに携わるハメに陥ってしまう。
 2冊目の「見知らぬ海へ」は隆慶一郎の遺作。未完である。結末が書かれていないのでフラストレーションが溜まるが、面白さは抜群。戦国時代から江戸時代にかけての向井水軍の話である。
 3冊目は江戸末期のお話。ペリーやプチャーチンなどが黒船で出没し、列国に開国を迫られる幕末日本のお話である。お台場警備を命じられた埼玉・忍藩が話の中心ではあるが、とにかく、歴史教科書をおさらいさせられる感じの本だから、これもまた物理学と同じで、興味がない人には豚の餌だ。
 読んだ本の紹介をするときは、それがお勧めであれば、この下にアマゾンや楽天へのリンクを貼るようにしている。他の人にも読んでもらいたいからだ。でも、本に限らず、このコラムでモノを紹介するときは、そりゃぁ、あくまでボク個人の好みだけが判断基準ではあるのだけれど、お勧めに値しないと思うものは、率直にそう書くようにしている。出版社からギャラをもらっているわけでもなし、つまらんものはつまらんと書くのだ。逆に、いいものはいいと書くから、付き合ってみて損はないと思う。
 というわけで、今回の3冊はどれも、ふんどしに短し、ハチマキに長しであった。その道に関心がある人は、ご自分で探して読んでいただければいい。



今日のプレミア版


メタリックシェイプ




展示作品:
通常版「メタリックシェイプ」
エッセイ:洗車の目的
今日のポイント:拙者の接写
ネット撮影会講評:yufukiさんの作品
「雨天の勤務」「視線の先」

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by osampo002 | 2009-07-28 02:50 | 本を読もう!

2009/07/26 SUN (No.2304)


サルビアと夏の空







 大宮花の丘農林公苑のサルビアである。非常に交通不便な立地であるために、県内ではマイナー公園の部類に入るのだが、園芸植物を「これでもか!」という具合に咲かせて見せるので、新聞の地方版などでは取り上げられることが多い。夏場はサルビアの赤が例年の定番である。
 考えてみれば、「大宮」という地名がすでにない。自治体合併で「さいたま市」に名を変え、いまや懐かしい地名一覧の一項目に過ぎない、過去の記憶の彼方地名になってしまっている。
 この公園、まだ新聞などで報道されるようになった以前から、ボクには馴染みだった。職業写真家宣言をした直後、それまでの付き合いの延長線上で、某大手旅行会社が埼玉県版のガイドブック出版を企て、ボクにその撮影依頼が来た。ほぼ1年にわたって県内の有名観光地、今後有名になり得る観光地の写真を撮った。そのときに発見した公園なのである。差別化するために、既存のガイドブックには載っていないポイントを探すことがギャラの条件だったから、ボクにとっても、自分が居住している県の隅々まで見て回る、いい機会になった。
 というわけで、この季節、毎年のように訪れる。毎年のように、この季節はサルビアであるから、例年同じ写真を撮っているようなものなのだが、梅雨が明けて夏が本番を迎えると、なにげに見に行きたくなる公園なのである。
 昨日の朝日新聞に出ていたけれど、駐車場はがらがらだし、公園内の人影もぱらぱら。写真撮影にとっては、マイナー公園ならではの特権というべきであろう。



今日のプレミア版


お控えなすって!




展示作品:
通常版「お控えなすって!」
エッセイ:夏本番
今日のポイント:カラスは難しい
ネット撮影会講評:はんべぇさんの作品
「雨も楽し」

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by osampo002 | 2009-07-27 02:54

2009/07/25 SAT (No.2303)


蜘蛛の糸







 すっかり忘れていたのだが、今日は地元越谷市の花火大会であった。相馬で撮ってきた画像を現像し、プレミア版の後出し版を出し終わったときに電話で呼び出され、プレミア版の普通版やこの無料普及版の積み残し配信は後回しになってしまった。
 マンション連合会関係の見物席だ。だが、座る向きが悪かった。音だけが聞こえ、肝心の花火は背中側に上がる。でも、まあ、タダビールがしこたま飲めたから、全然文句なしなのだ。
 恒例により二次会、その後三次会と消化し、帰宅したら早くも午前様であった。現在午前1時半、この最後の一通を出したら寝られる。歳のせいか、昨今は疲れが翌日まで残るキットくんなのであった。



今日のプレミア版


騎馬武者行列




甲冑競馬




神旗争奪戦




展示作品:
通常版「騎馬武者行列」「甲冑競馬」「神旗争奪戦」
エッセイ:野馬追い・2
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:休載

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by osampo002 | 2009-07-26 01:45

2009/07/24 FRI (No.2302)


甲冑競馬







 午前4時に揺り起こされ、それから午後3時過ぎまでしっかり歩かされた。相馬野馬追いの中日は、3つのメインイベントがある。騎馬武者行列、甲冑競馬、神旗争奪戦だ。いずれも主役は馬。伝統の重みを肌で感じるお祭りであった。
 帰路ももちろん熟睡。どこでも、どんな環境でも眠れる体質に産んでくれた両親に感謝である。メンバーの中には、行き帰りともほとんど眠れなかったという人もいたから、それを思えば強行軍も我慢の範囲だ。
 相馬野馬追いの主要イベントは、東京の馬事公苑などでも出張デモンストレーションをやるから、まったく未経験の被写体ではなかったのだが、本場の迫力はやはり別物であった。馬好きのはんべぇくんなど、目の色が変わっていたほどだ。馬との姻戚関係がないボクにとっても、本場の迫力に肌で触れられたのは、望外の拾いモノであった。めっちゃ疲れたけれども、それ相応の手応えを得られた撮影会であった。



今日のプレミア版


落馬




展示作品:
通常版「落馬」
エッセイ:野馬追い
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:休載

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by osampo002 | 2009-07-26 01:42

2009/07/23 THU (No.2301)


真夏の華







 相馬野馬追いに向かう貸切バスは、午後11時に東京駅八重洲口を出る。それまでの暇つぶしに、足立荒川花火大会を見に行った。
 実は、ボクの実家、今は母親が一人暮らしをしているマンションの部屋は11階にあり、この花火大会を真正面にする特等席なのだ。なので、今まで荒川河原に出て撮影するなど、思いつきもしなかった。したがって、実際に会場に行って撮影するのは、今回が初めてなのである。
 いやはや、人出の多さに度肝を抜かれた。あの広い荒川の河川敷が、北千住側も梅島側も、人でいっぱいなのである。2キロほどの区間の両岸が人間だらけ、足の踏み場もない。自分で数えたわけじゃないし、警察発表の数字を見たわけでもないけれど、たぶん10万人を優に超える群衆だったと思う。
 呼びかけたのが前日夜だったので、姿を見せたのはhermesさんだけだった。五反野駅で待ち合わせ、徒歩20分ほどの会場に着く。1時間ばかり置いて花火が始まった。特になんということはない、単に打ち上げ数が多いだけという大会だが、荒川のここらへんに屋形船がお出ましになることは滅多にない。それを見ただけでも来た甲斐があった。



今日のプレミア版


筆岩




荒川華やぐ




展示作品:
ダミー版「筆岩」
通常版「荒川華やぐ」
エッセイ:空振り
今日のポイント:休載
ネット撮影会講評:休載

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by osampo002 | 2009-07-26 01:40

2009/07/22 WED (No.2300)


電力錯綜







 お田んぼ倶楽部の2泊と昨日のトイレタイム、そして今日の洗濯タイムに銀林みのるの「鉄塔武蔵野線」を読んだ。2泊の間は、宴会が終わった後のベッドの中だったし、昨日はメルマガ配信で多忙を極めていたからトイレの間だけ、つまり3日間は触りの部分しか読めなかったのだが、今日はコインランドリーでお田んぼ作業着の洗濯をやったから、1時間ちょっとのまとめ読みができた。
 不思議な小説である。どこにでもあり、また、だれもが目にしていながらその存在を忘れている高圧線鉄塔、その鉄塔をこよなく愛する小学5年生の見晴は、家の近所に立つ鉄塔に、武蔵野線75号という標識を見つける。75号の隣は76号、試しに遡ってみたら81号がある変電所が終点であった。
 終点があるということは起点があるはずだ。翌日、3年生のアキラを誘い、2人は自転車を駆って1号鉄塔を目指す冒険旅行に出発するのである。鉄塔を辿っていけば、秘密の原子力発電所に到達できる、少年たちはそう信じて進んでいく。
 1994年に第6回の日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品である。作者自身の撮影による同じような鉄塔写真が散りばめられた応募作に、選者たちは一様に違和感を抱いたらしい。しかし、読んでみたら愕然、全会一致で大賞に選ばれてしまった。選評によると、荒俣宏氏「一作にして「鉄塔文学」というジャンルを作ってしまった空前絶後の作品」、井上ひさし氏「これまで見ていながらじつは見えていなかった風景を、見えるようにしてしまったという点で、まさに人間の心理的盲点めがけて投じられた一個の文学的爆裂弾」、安野光雅氏「鉄塔群は自然の風景の中の異物として、いつも白眼視される存在だった。しかし一度見方を変えると、屹立する巨人にも見え、このごろはやる大観音像よりよほど美しく見えてくる。どうやらこれは、文学の突然変異である。」
 半分ぐらいまでは、むしろ退屈な小説だ。だが、不思議なことに手離す勇気が出ない。少年たちの世界に、いつの間にか浸っている自分を発見するのである。じわじわと染み込むように感動が押し寄せてくる。
 文体は完全に大人の文体である。しかし、だからこそというべきであろうか、大人になってもどこかに眠っていた「少年の心」が呼び覚まされるのだ。鉄塔番号が一桁になったあたりからは、感動のあまり目が潤んでくる。そして、意外な結末と、驚きの後日談、読了後しばらくは、波立つ気持ちを抑えきれなかった。
 作者は、実質的にこれ一冊だけという無名作家だが、筆力は確かだし、なにより、少年の心理を、まるで自分自身が少年であるかのように描く力を持っている。この作品、1997年に映画化されている。DVDを探してみることにしよう。




今日のプレミア版


鉄塔のある空き地




展示作品:
通常版「鉄塔のある空き地」
エッセイ:空振り
今日のポイント:鉄塔は美しい
ネット撮影会講評:純之助さんの作品
「仕事にならんぞっ!」

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by osampo002 | 2009-07-22 22:24 | 本を読もう!

2009/07/21 TUE (No.2299)


区間準急







 お昼前まで泥のように眠った。こういう点、自由業は気儘である。これがサラリーマンなら、否応なく社会復帰を求められるわけで、お田んぼ倶楽部の他のメンバーにはちょっと申し訳ないというか、後ろめたい意識を覚える。
 しかし、起きてからは大変だ。留守の間のメルマガ配信が溜まっている。プレミア版の後出し版と本日分、普及版は4日分、都合6通だ。お散歩する間もあったもんじゃなく、午前4時半までデスクに縛りつけられていた。結局、この普及版の21日分が積み残し。一日遅れの配信になった。
 今回のように、3日間留守をした場合、その3日分は帰宅してからまとめて出すことになるわけだが、何人かの読者から、プレミア版でやっているように、1通に3日分を詰め込んだ後出し版にしたら多少は楽なのに、というメールをいただいている。
 実は、それは考えなかったと言ったらウソになる。作業量としてはコラム3つが1つで済むわけで、それがいちばん時間を食う作業だから、確かに楽にはなるのである。しかし、もう6年間も同じスタイルでやってきていることだから、いまさら楽な道を選ぶのは気が咎める。あたかも、戦場から逃げ出す脱走兵のような、後ろめたい気がするのだ。卑怯じゃないか、と思うのである。
 というわけで、相も変わらず睡眠時間を削っている。たまに泥のように寝てしまうのは、体が辻褄合わせを求めているということなのだろう。



今日のプレミア版


雨上がりの街




展示作品:
通常版「雨上がりの街」
エッセイ:除草法
今日のポイント:都市化
ネット撮影会講評:コージさんの作品
「オレンジ色の傘」

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by osampo002 | 2009-07-22 22:21