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2009/01/10 SAT (No.2107)


西日が射す窓







 池上司の「雷撃深度19.5」を読んだ。昭和20年7月29日、終戦まであと17日という瀬戸際に、帝国海軍の潜水艦伊58が米重巡「インディアナポリス」を雷撃し撃沈した史実を下敷きにして書かれた、著者の言葉によれば、「半分は歴史的事実、半分はフィクション」という戦記ものである。1996年発刊のこの本が、著者のデビュー作となる。米国側の登場人物は、すべて実名で書かれている。
 面白くて、一気に読んでしまった。戦記ものといえば、ちょっと大きな本屋を覗くと、書棚の一角を占有してしまうぐらいたくさん出版されている。あくまでボクの勝手な分類だが、それらは概して3つの種類に分類できると思う。ひとつは、実際に従軍した人たちによって書かれた史実もので、こないだの「キスカ」などがこれに当たる。
 ふたつ目は完全なフィクションである。戦争を扱っているから戦記ものに分類したが、実際はアクションもの、冒険小説に属する作品だと思う。アリステア・マクリーンの著作などがこれに当たる。
 そして、3つめはいわゆるシュミレーションものといわれる小説で、アメリカと中国が戦争状態に入るとか、日本に北朝鮮が攻めてくるとか、そういった類の空想物語だ。
 ところが、この「雷撃深度19.5」、これらの3分類のどれにも属さない。文体は完全なドキュメンタリータッチだし、時間の流れなども、(どの程度までかは分からないが)できるだけ事実に即して書かれているように見える。著者があとがきで、半分は虚構と言ってくれなかったら、全部史実だと勘違いする人もいるかも知れないと思わせるほどだ。
 あまり名前を聞かない作者だが、あの歴史小説の大家、池宮彰一郎の御子息だそうで、文章の巧さや構成力は親譲りということだろう。芸能人や政治家には親の七光りがごまんといるが、作家の2代目ってのは珍しい。デビュー後も作品を発表しているようなので、ちょっと探してみようかと思っている。


今日のプレミア版

冬桜



展示作品:通常版「冬桜」
エッセイ:長靴
今日のポイント:紅一点
撮影会講評:休載

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by osampo002 | 2009-01-10 23:30

2009/01/09 FRI (No.2106)


身から出た錆







 明後日から、今年初めてのお出かけである。お田んぼクラブの第1回例会と銘打って、松之山に小正月伝統行事を撮りに行くのだ。撮るだけではなく、賽の神、いわゆるどんど焼きには積極参加する。今年の豊作を祈る行事なので、お田んぼクラブでは毎年実施しているのである。
 従来は、自分たちの田んぼがある中立山集落でやっていた。しかし、今年は小正月の15日が平日なので、集まれない人が多い。幸い、小谷集落の賽の神が12日だということなので、それに便乗させていただこうってわけ。前夜の鳥追いは昨年から復活した伝統行事で、こちらは子どもたちが主役だから参加ってわけにはいかないけど、撮影はさせていただく。
 で、松之山に行くのは、事前にプレミア版のダミー版を予約配信しておかなくてはならないという程度の準備でOKなのだが、問題は15日の本当の小正月だ。実は、松之山から1時間半ほどの上越市の桑取集落で、こちらは復活などではなく、古来からずっと守り続けられてきた鳥追い行事があるのだ。そちらからご招待の声がかかっている。
 松之山は12日までだから、15日までどうするかが問題なのだ。いったん帰宅すると、3日後にまた新潟県に向かうことになる。長野経由だからかなり遠い。松之山に延泊すれば、1時間半で行ける。しかも、延泊している間、心おきなく雪景色を堪能できるし、酒を飲んでも睨みつける鬼嫁はいない。
 さて、どっちがいいか。延泊しても、宿泊する三省小学校はネット環境だから、メルマガ配信に障害はない。ただし、宿泊費と食費代がかかる。いったん帰宅すれば、宿泊と食費はタダだが、高速料金と燃料代が余分にかかることになる。しかも、その間、鬼嫁の監視下に入るというおまけ付きだ。
 という風に、冷静に損得を羅列してみたら、結論は考えるまでもない。延泊だ。日曜日から金曜日まで、ほぼ1週間留守をすることになるから、その間の両親の介護(といっても、顔を出すだけだが・・・)だけをだれかに頼めばいい。だれか、といっても鬼嫁しかいないって点が、実は最大のネックなんだけどね。


今日のプレミア版

しのつく雨



展示作品:通常版「しのつく雨」
エッセイ:空振り
今日のポイント:騙し絵
撮影会講評:ナンさんの作品
「手慣れた両刀使い」

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by osampo002 | 2009-01-10 02:28

2009/01/08 THU (No.2105)


残りわずか







 実家に母を見舞った。その折に聞いた話。
 「終戦の前の年、八代の田舎にいた小娘の私なんかにも、この戦争は負けっとじゃなかかかという予感があった。ときどきだったばってん、不知火海の上をB29の編隊が北のほうに飛んでいくとが見えた。佐世保や長崎、博多あたりが、爆撃でやられたという噂が、どこからともなく聞こえてき始めたのもそのころたい。
 ちょうど女学校を卒業したばっかりだったばってん、勤労動員がかかって、娘たちは蒟蒻爆弾の工場勤務と、松の根掘りに行かさるるようになった。そんときに、たぶん父親が裏で手を回さっさったっじゃろ、私と、ほかに3人だけが、駅前の安田銀行に雇われることになった。4人とも、八代町内や周辺の村の金持ちの娘ばっかりたい。
 当時、女学校では算盤は教えんかったから、算盤ができんもんが銀行に勤められるはずはなかったばってん、とにかく、そういうことになった。親がたくさん預金しているからとか、町長が口を利いたからとか、そういうことだったんだろうね。
 で、銀行での仕事は、金の勘定はできん、算盤はできんということで、毎日毎日伝票運びばっかりたい。こっちの部署からあっちの部署、あっちからこっちと、一日中銀行の中を走り回っと。こん前、大学病院に行ったら、伝票が受付からあっちこっちに、天井に張り巡らされた透明な管の中を、しゅーっ、しゅーっと移動していくのを見たばってん、当時は、だれもそういう仕掛けを考え付かんかったんじゃねぇ。
 銀行には、松高村から歩いて通うしかなかった。小さい時から体が丈夫じゃなかったけん、片道2時間近くの通勤が、初めのころは辛くて辛くてしょうがなかったばってん、そのうちに慣れてきたら、反対に、その通勤が楽しみになった。
 松高村を出るまでは、ところどころにある茅葺農家は全部うちの小作さんたちだから、行き合うとよく声をかけてくれなさった。子供のころは、小作と話をしたらいかん、と親にきつく言われとったけん、顔は知っとっても話をしたことはなかったとばってん、雨の時は傘を貸してくれなさったり、リヤカーに乗せてくれなさったり、親切な人ばっかりだった。
 冬になると帰りが夜になる。そういうときは、本家の1つ年上の従兄が、自転車で迎えに来てくれた。小さい時から大の仲良しで、大人たちが、将来は夫婦たい、なんて言っていた人だった。その従兄は、終戦の年の初めに赤紙がきた。村中で日の丸の旗を持って、八代駅まで送って行った。泣きたかったばってん、出征兵士を送るときに涙を見せっとは絶対いかんと知っとったから、無理やり笑って旗を振った。
 戦後、小さな、ちょうど宝石箱ぐらいの大きさの骨箱と戦死公報が送られてきた。その骨箱を開けてみたら、お骨じゃなくて、小さな石ころが一つだけ入っとった。たぶん、南方に送られる途中で、輸送船ごと海に沈んだんだろうね。」
 そう言って、母は涙ぐむのであった。


今日のプレミア版

生乾きの靴下



展示作品:通常版「生乾きの靴下」
エッセイ:負担は増えるが
今日のポイント:光と影
撮影会講評:ナンさんの作品
「ほほ寄せ合って」

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by osampo002 | 2009-01-09 02:30

2009/01/07 WED (No.2104)


鉄塔







 市川浩之助著「キスカ」を読んだ。言うまでもなく、先の大戦中に実施されたキスカ撤退作戦に関する本である。著者は、作戦に参加した軽巡洋艦「阿武隈」に搭乗していた主計士官。
 「帝国海軍唯一の、奇跡のパーフェクトゲーム」、「日本海軍のヒューマニズム」と米軍に言わしめたキスカ撤退作戦、知っている人は知っていると思うが、アリューシャン列島のアッツ島守備隊玉砕を受けて、全滅必至と見られていた隣の島キスカ島から、十重二十重の米軍包囲網をすり抜けて、守備隊5千数百名を、一兵残らず収容し、撤収させた作戦である。
 日本軍は、とにかく、負けても玉砕しても進軍するのみ、撤退という言葉は禁句であった。そういう伝統の中で撤収作戦が発令されたというのも奇特だが、それが、緻密な作戦と忍耐とによって、完璧な成功を収めたという点でも特筆に値する。この奇跡の作戦行動については、当時従軍していた人たちやプロの作家が、多くの著書を出している。阿川弘之の「私記キスカ撤退」はロングセラーだ。
 作戦実戦部隊の先頭艦としてキスカに突入した「阿武隈」は、第五艦隊所属である。その「阿武隈」搭乗の気象士官は橋本少尉(のち戦死)だが、実は、作戦では後方支援部隊に回った、第五艦隊旗艦である「那智」に搭乗していた気象士官がボクの父親だったのだ。
 したがって、この作戦の概要はよく耳にしていた。特に、作戦の成否が現地の霧の発生にかかっていたため、天気予報の成否が鍵を握っていたということも知っていた。上記の橋本少尉だけではなく、後方に控えていたボクの親父にも重圧がかかり、わずか2か月の作戦期間中に、骨と皮のようにやつれてしまったそうだ。
 それについては、上記の阿川弘之の小説にも詳述してあり、親父は実名で出てくる。とかく戦時中のことになると大袈裟にしゃべる親父であったが、キスカ撤退作戦に関しては、小説やこの本のような実録戦記などによって、まあまあ事実に即した自慢話だったなと感ずるのである。
 そういう身近な主題を扱った本であるから、面白く読めた。著者が一日も欠かさずつけていた日記がネタになっているため、記憶だけで書かれた戦記(そういうのが五万とある)やフィクション混じりの小説、公式記録などでは窺い知れない実情を知ることができる。
 失敗する確率99%、失敗すれば全員戦死という状況下でも、実戦部隊の乗組員たちは泰然自若、ユーモア精神を失わなかったなどという話は、親父から聞いていた「海軍魂」の神髄に触れたような気がして、特に印象深かった。


今日のプレミア版

冬の影



展示作品:通常版「冬の影」
エッセイ:ネット撮影会年間テーマ・続き
今日のポイント:冬の街
撮影会講評:ナンさんの作品
「主人待つ間は低姿勢」

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by osampo002 | 2009-01-08 04:28

年間ネット撮影会

年間ネット撮影会

今年のテーマは「にほんの里百選」

年間を通じて募集します。1回あたりの応募点数は50点程度まで。何度でも応募可。

ひとつ、あるいはふたつの場所を、多様な視点から、年間を通じて撮影すること。


「にほんの里百選」⇒http://www.asahi.com/national/update/0105/TKY200901050311.html

http://www.sato100.com/photo/img-106094429.pdf

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by osampo002 | 2009-01-07 02:29 | お知らせします!

2009/01/06 TUE (No.2103)


球体







 年末に音楽座のミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」を観に行ったときにご案内を頂戴していたので、今日は、同じ音楽座が公演した「地下鉄(メトロ)に乗って」の映画版を観てきた。久しぶりに銀座に出、数寄屋橋の丸の内TOEI2に向かう。
 「地下鉄に乗って」は、言わずと知れた浅田次郎の吉川英治文学新人賞受賞作。音楽座は2000年にミュージカルとして初演、さらに2007年に再演したが、この再演の舞台がソニーの映像技術によって映画化され、全国上映となった。今回のは、その再上映になる。
 いただいたパンフレットにもあったが、原作者の浅田次郎は、このミュージカルの制作発表の場において、「200%満足な出来栄え」と評したという。映画を見て、さもあらんという感想を持った。というのも、ストーリー展開が、ミュージカルという制約の多い舞台であるにもかかわらず、きわめて原作に忠実で、回想シーンなども工夫を凝らし、はしょることなく演じられていたからである。
 この作品のストーリーの鍵は、主人公が地下鉄の階段を上がるたびに、地上には過去の世界が展開しているところにある。つまり、現代と過去(昭和30年代から終戦直後、戦時中とだんだん遡る)との舞台転換をどう見せるかという点に難しさがあるわけだが、それが実に見事に処理されていた。
 概して、原作と映画化されたものとは、まるで似ても似つかぬ別モノになるのだが、ここまで忠実にやられたら、原作者も文句のないところだろう。
 ただ、逆に言うと、原作を読んでストーリーが頭に入っている人は、次の展開が読めてしまうので、ストーリーに対するわくわく感ではなく、原作をどう料理したか、そのレシピに対する興味が先走ってしまい、原作を読んだ時と同じ感動は味わえないのではないか。実際、ボクがそうだった。
 ストーリーに対する興味が削がれる結果、休憩をはさんで2時間45分という時間が、長すぎると感じたことも言っておこう。これは多分に、音楽に対する好みにも影響されていると思う。軽音楽系に関心がないため、ボクに関して言えば、ミュージカルの楽しみの半分は捨てているのと同然なのである。
 そういう意味では、かなり偏った鑑賞者だと言える。ストーリーは文句なく素晴らしいし、ミュージカルそのものも、とても良い作りだし、映画館だから音響も文句なし、ボクみたいな偏屈ものではないミュージカル好きの人には、十分満足してもらえる映画だと思う。実際、終演時に目を赤くしていた人もいたぐらいだから、原作の感動は、このミュージカルでも十二分に味わえるだろう。


今日のプレミア版

不況の風



展示作品:通常版「不況の風」
エッセイ:ネット撮影会年間テーマ
今日のポイント:冬の街
撮影会講評:けんちゃんの作品
「撮れたよほら」

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by osampo002 | 2009-01-07 02:25

2009/01/05 MON (No.2102)


窓際







 2日かけて江藤淳の「海は蘇える(上下)」を読んだ。明治31年から8年間海軍大臣を務め、その後、第16代、第22代内閣総理大臣を務めた山本権兵衛の伝記である。勝海舟、西郷隆盛、西郷従道(隆盛の弟、海軍大臣)、伊藤博文に私淑、維新後の帝国海軍の基礎を築き、日清、日露戦争を勝利に導くについて、戦略面での中枢に位置した人物である。
 維新前の薩英戦争、戊辰戦争には従軍したが、日清、日露では海相官房主事、海軍大臣であり、戦場には出ていない。したがって、伝記の大半は、銃後における知略の物語であり、いわゆる血沸き肉踊る展開はほとんどない。
 なので、熟読すればすごく面白いのだが、明治時代の公文書が原文で多数引用されていて読みづらいし、また、文庫で上下巻千ページを超す大部であるため、読むのにかなりの時間がかかる。人様にお勧めするには、ちょっとためらうような本だ。
 ただ、山本が生きた時代は、日本が近代国家を目指して脱皮を繰り返した時代であり、歴史の流れ自体は波乱万丈だ。その時代に生きた政界、軍部の指導者たちの懊悩や試行錯誤、決断は、その一つ一つが太平洋戦争、ひいては現代に繋がっている。そういう視点から読むと、単なる伝記ではない重さを体感できる作品である。読了後の満足感は保証できると思う。


今日のプレミア版

そよ風



展示作品:通常版「そよ風」
エッセイ:久しぶりに長距離散歩
今日のポイント:被写体ブレと手ブレ
撮影会講評:休載

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by osampo002 | 2009-01-06 02:33

2009/01/04 SUN (No.2101)


凝視







 昨日のこの欄で鳥追いのことについて書いたが、掲示板に読者のすぎやんから、鳥追いは決して象徴的な行事ではなく、現実的な、実効のある方法であったとの書き込みをいただいた。全文は掲示板を参照していただければいいが、夜間、民家の近くの林などに眠っている鳥の群れを、光や煙で追い出し、他の場所に追い払う効果を狙ったのだそうだ。
 ふむ、なるほど、そういうことだったのか。納得である。この欄では、いろんないい加減なことを書きなぐってきたが、読者の皆さんから、種々のご指摘やご教授を頂戴する。中には、言いがかりとしか読めないようなものもあるにはあるが、多くは教えられること大である。無学なボクには、たいへんありがたいことだ。
 ところで、このようなご指摘の中には、ボクの言葉遣いに関するものも多くある。言葉の使い方が適切ではないという指摘の代表格が「鬼嫁」という言葉なのだが、そのほかにもいろいろある。明らかな間違いである場合には、素直に受け入れ謝罪するけれど、大半は無視である。なぜなら、このコラムは別に学術論文ではなく、逃げも隠れもしない駄文であるし、書いている本人が半分冗談みたいな人間なのであるから、文章も半分冗談だからである。
 よくあるご指摘に「禁止用語」「差別用語」というのがある。今日も、「裏日本」という言葉が差別用語であるというご指摘を頂戴した。列島改造の頃までは、テレビや新聞でも堂々と使用されていた用語だ。
 「裏」は単に「表」(東京を玄関口に見立てている)の反対側というだけの意味であるから、差別用語ではないはずなのだが、あの田中角栄がマスメディアに使用禁止を強要したことから、政治家の言うことには決して逆らわない某国営テレビが使用を自粛、それで差別用語みたいな扱いになった言葉である。ボクらの年代の人間には、教科書にも使われていた言葉だから、なんの差別意識もない。
 今は、「太平洋側」「日本海側」と言うらしい。しかし、これはちょっとおかしい。「裏日本」は本州だけの地域分け用語であって、それには九州と北海道の日本海側は含まれないのだから、「裏日本」と「日本海側」は同義ではないからである。「本州の日本海側」というのなら異議はないが、「裏日本」と言ったほうが、よほど簡潔だと思う。
 ずっと以前、まだ発刊して間もない頃に、この「差別用語」(「ばかちょんカメラ」という言葉)に関する激論が起こって、賛成派、反対派入り乱れてのすったもんだがあった。
 そのときに感じたのだが、単なる民間会社に過ぎないマスメディアが、社内規則として定めているだけの使用自粛用語が、あたかも法律でもあるかのように世間を蹂躙している。某教員組合や教育ママ団体が、大声を上げて吠え立てる。おかしな話である。
 もちろん、ある言葉から不快感を感じる人が多数いるのであれば、生きていく上でのマナーとして、なるべくその言葉は使わないようにするということは大事だが、重箱の隅をつつき過ぎたら針小棒大になる危険性があること、言葉の文化を破壊しかねないことも承知しておくべきだと思う。「めくら蛇に怖じず」が「目の不自由な人蛇に怖じず」では、それこそ話になるまい。
 使うほうに差別意識があり、使われたほうに被差別意識が生じるという、両面性を備えるから「差別用語」なのだと考える次第である。


今日のプレミア版

得意満面



展示作品:通常版「得意満面」
エッセイ:ベスト100
今日のポイント:お久しぶり
撮影会講評:Ukiukiさんの作品
「初めてのメール」

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by osampo002 | 2009-01-05 00:10

2009/01/03 SAT (No.2100)


暮景富士







 再来週の連休からしばらく、ボクは新潟県に滞在する。お田んぼ倶楽部の今年第1回目の例会として、松之山の小谷集落で鳥追い行事と犀の神に参加、撮影し、正式な小正月である15日には、上越でやはり鳥追い行事の模様を写すつもりだ。
 犀の神行事は、地方によりどんど焼きなどとも呼ばれ、今でもその伝統行事が受け継がれている地方がたくさんある。田んぼで前年に収穫された稲の藁を燃やし、田んぼの神様に今年の豊作を祈る行事である。田んぼで藁を燃やすことで肥料、つまり、不足しがちなカリを補給する。化学の知識などほとんどなかった昔から、経験的にその有効性が認識されていたのだと思う。
 一方、鳥追い行事は、子どもたちに松明を持たせ、夜間に集落内を巡らせて、その煙で田んぼの害鳥を追い払うという行事である。害鳥そのものがいない冬場の、それも夜間に煙を炊いても、害鳥避けになるはずもないが、象徴的な意味が尊ばれた行事なのであろう。
 この鳥追い行事、かつては全国各地でそれぞれのスタイルで行われていたもののようだが、犀の神(どんど焼き)とは違い、いまだに受け継がれている地方は、全国探してもあまりない。参加者が子どもに限られるという点、夜間の行事であるという点などが、農村の現状にマッチしないということなのであろう。子どもがいなくなり、冬の夜中に子どもを戸外に出すことにも抵抗を覚える風潮に負けたのだと思う。
 しかし、新潟にはまだこの行事が残っている。小谷集落で行われる鳥追いは、長い間途絶していたものを、去年から復活させたものである。一方、上越の方の行事は、規模こそ縮小したものの、大昔から中断することなく、毎年行われてきたものだ。
 なぜ新潟にこういう伝統行事が残ったのか。理由は判然としない。だが、ボクなりに考えるのは、江戸時代以降、新潟が貧乏県の代表格であったことと無縁ではないように思う。
 江戸以前、新潟全土は上杉謙信の支配下にあり、それなりに文明圏であった。しかし、徳川の治世になり、新潟はなんと、11もの藩に分割されたのである。最大の高田藩でさえ、わずか15万石の小藩であった。しかも、佐渡や現在の新潟市など、産物に恵まれた土地は天領とされ、それ以外にも、会津藩や米沢藩などの飛び地があちこちに認められていた。
 あまつさえ、裏日本である。冷害による飢饉が日常茶飯事という地域だ。貧乏小藩の上に、数年ごとにお約束のように飢饉に見舞われる。少しでも餓死者を減らすためには、神様に精一杯のお祈りをする以外に方策がなかったのであろう。子どもだろうがなんだろうが、とにかく、歩ける者なら誰でも動員して祈る、それが根強い伝統として今に伝えられたのではないかとボクは思うのである。
 とまれ、こういう伝統行事は、当事者が頑張って受け継いでいくという点ももちろんだが、それを写真に記録するという行為にも大きな意味があると思う。長逗留で財布には酷だが、楽しみな被写体である。


今日のプレミア版

東京薄暮



展示作品:通常版「東京薄暮」
エッセイ:呑兵衛
今日のポイント:実家からの夜景
撮影会講評:髭正さんの作品
「想い出のデジタル記録」

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by osampo002 | 2009-01-04 04:37

2009/01/02 FRI (No.2099)


暮れ行く一日







 今月末から来月にかけての京都美山「かやぶきの里雪灯篭」撮影会だが、悩みぬいた挙句、結局参加しないことにした。
 関西支部のうみひこさんやkyokoちゃんを始め、いろんな方からお誘いをいただいたのだが、スケジュールの調整はなんとかできる目処は立ったけど、日程がハードすぎて二の足を踏むに至ったのだ。日程調整がつかなかったと白っぱくれればいいのだが、どうせこのメルマガでボクの日常はお見通し、正直に理由を述べる。
 お散歩ネットは全国に支部があり、会員の皆さんは、全員このメルマガの読者である。あちこちで撮影会をやっているうちに、参加した人たちの間で自然発生的に誕生したお散歩ネットだから、いちおう主催者はボクということになってはいるが、運営にはタッチしていない。それぞれの支部で支部長を選任し、その下で自主的に撮影会をやっているのである。
 したがって、その撮影会にボクが参加する義務はない。だが、少なくともお散歩デジカメ繋がり、キット繋がりという共通項を持った人たちであるから、ボクは、最低でも年に一回はそれぞれの支部に出向くことにしている。このメルマガが、写真を楽しもうという人たちへのプレゼントみたいなものだと位置づけている以上、もっと楽しみたいという人たちにそっぽを向くのは心苦しいからだ。
 しかし、今度の美山はちょっと苦しい。というのも、京都から3時間という遠方である。車で行っても新幹線を使っても、当日出発なら到着は夕方、一泊して翌日帰ってくるとなったら、現地には午前中までしかいられない。ということは、行ったとしても、疲れるだけでろくに撮影する時間はないということになる。
 じっくり撮影したい、つまり、宴会だけではなく撮影会にも参加したい、ということであれば、京都あたりで前後1泊ずつ、2泊を追加することになる。行き帰りの費用が10万円規模になるということだ。
 全国の撮影会にできるだけ参加したいとは言っても、会費は一切いただいていないから、費用はすべて自前である。なので、行くとしたら、なるべく初めて行くところ、あるいは、ボクなりに興味を持っていて、撮り続けたいと思っているところでの撮影会を優先して考える。財布にも限度あり、ということなのだ。
 京都・美山は、茅葺き集落が観光用としてではなく、地元の人たちの生活の場として維持されているところで、全国にここ一箇所だけしかない、貴重な集落である。だが、田んぼ撮影がライフワークであるボクは、過去何度も行ったことがあるし、雪灯篭も撮影している。改めて再訪して撮りたいイベントがあるなら別だが、そうでなければ10万円には軽すぎるということなのだ。
 参加するみなさんには、大いに楽しんでいただきたい。関西には、去年は吉野山の1回しか行けなかった。財布とカレンダーが許す限り、今年はもっと行きたいと思っているので、這ってでもボクが行きたくなるような魅力的な撮影会を企画していただきたいと、手前勝手ながら、伏してお願いする次第である。


今日のプレミア版

越谷田んぼ



展示作品:通常版「越谷田んぼ」
エッセイ:初詣
今日のポイント:パターン破り
撮影会講評:あいまいさんの作品
「着信中」

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by osampo002 | 2009-01-03 00:48