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6/27 今週の書評




荻原浩
「誘拐ラプソディー」
★★★★★


 なにかと忙しくて、先週はたった一冊しか読めなかった。めったにないことである。忙しさの原因である「なにかと」が実はサッカーだと知ったら、読者の中には怒髪天を衝く人もいるかも知れないが、毎夜のように1試合ずつ観戦するものだから、その分のしわ寄せが昼間の時間に割り込んでくる。ゆっくり読書なんかやってられないわけだ。
 たった一冊であったが、その一冊が星5つだったのは幸いだった。もうお馴染みの荻原浩である。去年だか一昨年だかに映画にもなった「誘拐ラプソディー」を楽しく読ませてもらった。著者特有の軽くてユーモラスな筆致に、ストーリー展開がぴったりはまった小説だった。
 ギャンブルで借金の首が回らなくなった伊達秀吉は、前科3犯と知りながら親身になって面倒を見てくれた工務店の親方を、ふとした逆ギレでぶん殴り、5万円とトラックをかっぱらって逃走する。しかし、わずか5万円の持ち金はすぐに底を突き、トラックのガソリン代さえ払えなくなる。わが身のあまりの情けなさに自殺しようとしていたそのとき、たまたま5歳の男の子を抱え込むことになった。
 これはチャンスとばかり、その子を誘拐したことにして、身代金5千万円を要求する。ところが、その子の親とは、泣く子も黙る指定暴力団の組長であった。その暴力団だけではなく、香港ギャングや警察にまで追われる巡り合せになっていく。一方、誘拐したはずの男の子とは、いつしか心が通じ合うようになり・・・。
 前科者だが悪人にはなりきれない秀吉の擬似誘拐計画は果たして成功するのか、結末まで飽かずに読ませる秀作であった。

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by osampo002 | 2010-06-30 14:31 | 本を読もう!
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