夜の雨 司馬遼太郎の「北斗の人」を一気に読んだ。文庫本で600ページ以上という大部だが、息もつかせずという感じで読ませてしまう面白さだ。当然、キット評価は[★★★★★]。 この本、実はボクが買ったものではない。親父のところから回ってきたのだ。親父に本を運ぶのは、ほとんどの場合ボクの役目だから、本来ならそういうことにはならないのだが、たまたま荻窪の次弟が親父を見舞った際にこの本を差し入れた。読み終わった親父が、「これは面白いぞ」、と言ってボクに回してくれたのである。 江戸末期に、門弟5千人と謳われた剣豪千葉周作の半生記である。奥州の片田舎から馬医者(獣医)の父親に連れられて(千葉の)松戸に居を移す少年時代から、各地の道場破りを続けながら、北辰一刀流を打ち立てるまでの青年時代を描いている。主人公自らの著作や覚え書きを下敷きにしながらフィクションを形作っていく、司馬遼太郎ならではの小説作法である。語り口も独自の司馬節がいかんなく発揮されていて読みやすい。 もともとは1965年に週刊現代に連載された小説である。連載終了まもなくの1967年には、早くも加藤剛主演で連続テレビドラマ化(テレビ朝日)されて、ギャラクシー賞を受賞する秀作となった。原作の面白さがあればこそである。74年にも伊吹吾朗主演で連続ドラマ化(フジテレビ)されている。 千葉周作と言えば、ボクの頭の中では、現代剣道の萌芽期を担った人というイメージしかなかった。それまでの、大怪我覚悟の木刀修業を改め、防具と竹刀による稽古を普及させた人物である。伝統的な流派、いわゆる古流の武術者からは、お遊びの剣法と蔑まれるが、実は、寸止めしなければ稽古にならない古流では実戦的な修業が実質上できないから、どうしても「型」を重視するという流れになる。 ところが、防具、竹刀の稽古だと、遠慮なく打ち込みができる。型よりも勝つことに重点が置かれることになり、周作の、宮本武蔵をも凌ぐ連戦連勝も、理由なきことではなかったわけである。弟子たちへの教え方も理論優先、実践重視で、当時は、他流で5年かかる修業が、お玉ヶ池の千葉道場なら3年でできると評判を取った。そこに至る若き周作の試行錯誤も丹念に描かれている。極め付きの娯楽小説である。 今日のプレミア版
雨の国道 展示作品:普及版「雨の国道」 エッセイ:一方的に攻撃されてしまった 今日のポイント:都市の夜景は ネット撮影会講評:k_tsubakiさんの作品「激闘」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Premium版の購読申込みはこちら。 購読料(月間1,050円)はクレジットカードからの自動引き落としです。
by osampo002
| 2010-02-16 03:12
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