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2010/02/12 FRI(No.2505)


黄昏国道





 友人に頼まれて、歯磨きのモニターをやっている。新製品を発売する前の、試作品を使った人体実験、みたいなものである。なにも印刷されていない真っ白なチューブを1本渡され、それで毎日歯を磨く。チューブで磨くのではなく、歯ブラシを使ってその中身で磨かなくてはならない。これまでにやったことがない磨き方だ。モニターをする一定期間中は、それだけを使い続ける。従来使用していた歯磨きとの併用は、してはいけない約束になっている。
 聞かれるのは、別に歯が丈夫になったかどうかとか、虫歯が突然正常な歯に戻ったとか、歯槽膿漏が悪化したとか、歯が超合金になったとか、歯医者じゃないと判断できないような事柄ではなく、単に、使い心地はどうだったか、つまり、味や香り、泡立ち、後味とか、清涼感、罪悪感、送水管、鉄管、借款、納棺、そういった感覚的な印象だけである。その歯磨きを使ったために膀胱癌になったとか、ハゲたとか、顔がダスティン・ホフマンに似てきたというようなことは無視していい。
 友人の頼みだから謝礼はいただかない。せいぜい、帝国ホテルのレストランで、1枚3万円の松坂牛ステーキ2枚と、1本15万円のフランスワインを奢ってもらうぐらいだと思う(彼はこのメルマガの読者である)。あるいは、ボクの考えすぎかもしれないが、貧困に喘ぐボクの暮らしを憐れんで、歯磨きを恵んでくれただけなのかも知れない。もしそうだったら、そんなバカにした話はないから、ステーキは5万円を3枚、ワインは20万円にしてもらうことにしよう。ただ、念のために申し添えるが(ちゃんと読めよ)、鬼嫁同伴の招待は勘弁願いたい。せっかくのステーキとワインが不味くなってしまう。予算があるのなら、鬼嫁の分までボクが食うから。
 問題が一つある。その歯磨きを使い始めた早々に、左下の奥歯の詰め物が割れて、一部が欠損状態になった。全部取れたわけじゃないし、痛くも痒くもないから、暇になるまで歯医者には行くまいと思ってはいるが、口中の違和感と、毎食後の歯磨きの面倒臭さが嫌だ。原因がその歯磨きだと証明できるのであれば、友人の会社から慰謝料でも口止め料でもいいから大金をふんだくってやれるのに、その証明ができぬ。歯磨き1個のために、こんな悔しい思いをするとは思ってもみなかった。


今日のプレミア版


ポスト・・・?



展示作品:普及版「ポスト・・・?」
エッセイ:忘却に関する深遠なる考察
今日のポイント:ポストは貯金箱にもなるが
ネット撮影会講評:コージさんの作品「都会の道」
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by osampo002 | 2010-02-13 03:54
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